宝塚暮らしとやさしい時間

カフェや美術館、お出かけのこと。 おやつと日々のことも。 宝塚の住人です。

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先日、京都国立博物館「佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美」へ行ってきました。


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過去最大の31点が一堂に会した今回は、とても話題になっていたせいかたくさんの人で賑わっていました。


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鎌倉時代13世紀ごろに描かれた800年前の歌仙絵は、絵巻のままで残っていたら間違いなく国宝だっただろうと言われる貴重なもので、歌仙絵がバラバラにされた切断事件から100年。
そのうちの31点ですから過去最大規模の終結です。
まさに奇跡の再会!!


長い流転の先に歌人の肖像と和歌が1枚に描かれた絵巻の傑作は売りに出されることになりましたが、高額になりすぎたため買い手がつかず、1919年(大正8年)当時の財界人や茶人らは一歌仙ずつを切断し、共同購入することに決めました。
誰がどれを購入するかはくじで決められました。
でも切断したことで海外への流出が免れたことは本当によかった。
そんな切断事件の成り行きを後のインタビユーなどから当時の様子を丁寧に解説していたのも興味深い展示でした。


美しい和歌は本当にため息がでます。
制限のある字数五七五七七の中に数々の和歌の技を駆使して心情をうたうなんて、本当におもしろい!
学生の頃はあんなに苦手だったのに(笑)
そして隣に添えられた詠人の肖像画は繊細なタッチで、人物の目線に込められた不安定な心情や吹いている風も感じられます。
十二単をまとう小大君(こおおきみ)は美しかった。


巻物だった歌仙絵は分割された後にそれぞれが掛け軸に。
またその表具の艶やかなこと!
切断したことで裂(きれ)とのバランスや和歌の内容と関連づけた柄など、美意識の高い一つの芸術になったのですね。
趣向を凝らした掛け軸の美しさも見どころの一つでした。


古の名品は多くの人の努力がなければ、売却や戦争の流転の先にこうして観ることはなかったのだと思うと、歌仙絵だけでなく建築や美術品全てにおいて、古くから守られて現在観ることができるものこと全てに感謝ですね。
素晴らしい歌仙絵とともに長い流転のドラマを堪能しました。



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龍谷ミュージアム「日本の素朴絵」展へ。



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ゆるい絵って集めると圧巻ですね。

これだけの数を集めると本当に素晴らしい。



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思わずクスッと笑ってしまうユルさ。

狙って描いたもの、真面目に描いたけどユルいもの。

どっちも笑えます。



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キャプションが「丹念な筆致が印象深いが、建物の平行関係が描けない素朴絵特有の描写」って言うのをみて笑ってしましました。

ときどき図録を開いては笑ってます。

これはまだまだ探求の余地がありそう。



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またぜひ企画してほしい美術展でした。

先日、「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」に行ってきました。
会期はまたもや終了しているけど覚書として。


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ショーン・タンはイラストレーター・絵本作家として活躍しながらアニメーションを手がけるなど、表現の場をますます広げているアーティスト。

 移民をテーマに5年の歳月をかけて描いた「アライバル」の原画がたくさん並んでいて、細密な絵を堪能しました。
「アライバル」の立案から絵コンテ、原画と試行錯誤しながら完成へと進んでいく制作過程もわかる絵本好きには楽しすぎる美術展でした。

一コマ一コマを一度絵コンテ通りに写真を撮って、その通りに精密に描くことでリアリティーが増しているコマ割りの表現はアメコミの手法を取り入れているそうですよ。

リアリティーがあるからこそ、どこでもないどこか。
どこでもあるどこかかもしれませんね。

登場する得体の知れない生き物は、可愛いではない優しさと温かさを感じられるのが魅力的。
そして孤独さえも感じる。

発想の面白さやメッセージ性のあるストーリーも、大人が観て充分に楽しめるショーン・タンの絵本の世界を楽しみました。



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「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」
2019年9月21日(土)〜10月14日(月)
美術館「えき」KYOTO 

先日、「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」へ。
もう、会期は終了していますが覚書として。

大阪市立美術館8月10日(土)〜9月29日(日)の間開催していました。


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メアリー・エインズワースは1867年から1950年にアメリカで生きた女性です。
アメリカ人女性というだけで日本の浮世絵とはなかなか結びつきませんが、明治39年(1906年)に来日したことがきっかけで集め始めたといわれています。

エインズワースが39歳の時に訪れた明治の日本。
きっとアメリカから来た女性にとって想像するよりも刺激的だったでしょうね。


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25年にわたり集められた浮世絵はその数1500点。
その中から選りすぐりの200点を今回は観ることが出来ました。
その過半数が歌川広重。
「東海道五拾三次之内」から晩年の作品までと、保存状態も良く美しい色の状態で遺されていました。

初めての里帰りとされる浮世絵も散り散りバラバラになって、戦争や災害で散逸することを考えると、アメリカで大切にコレクションされてよかったのかもしれませんね。

歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」は他のバージョンのものよりも色が好きです。
ゴッホが模写したといわれる「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」も。
同じ浮世絵でも摺った時期が早い方が作家の意図が反映していたり色が違ったりと、微妙な違いがあるのも面白いところ。

エインズワースの愛した広重の世界を堪能できる美術展でした。





「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」
大阪市立美術館
8月10日(土)〜9月29日(日)






 

先日「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展に行った時に、同じ伊丹市立美術館にある柿衛文庫の特別展「蕪村の手紙」展へ。

柿衛文庫の開館35周年記念の特別展なのだそうです。

与謝蕪村といえば1716年から1784年の江戸時代を生きた俳人であり画家。

蕪村の生涯の中でしたためた手紙を中心に、画や俳句の作品も紹介しています。


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今と違って書簡でやりとりをする時代。
絵文字はなくとも手紙の文や文字の個性から、蕪村の心の内を伺えます。

娘を思う家庭人としての蕪村。
「奥の細道」画卷ができた時の喜び。

手紙の中にその時の感情もそのままに生き続けていました。

逸翁美術館で観た「又平に」にもまた会えて満足。

公開は10月20日(日)までです。




特別展 開館35周年
「蕪村の手紙」
柿衛文庫
2019年9月7日(土)〜10月20日(日)

 



 

ちょっと前ですが伊丹市立美術館の「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展に行ってきました。

楽しみにしていたルート・ブリュック。
フィンランドを代表するセラミック・アーティストの日本初個展とあって、ファンは心待ちにしていたのでは?


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この少し前に「フィンランド陶芸」展でもルート・ブリュックを観て気分は幾分上がっていたのでなおさらです。

ルート・ブリュックはフィンランドの名窯アラビアで50年もの長い間活躍してきた女性アーティストです。
女性ならではのやわらかい感性、北欧フィンランドを感じるような透明感、釉薬の繊細な色の組み合わせは、可愛いだけじゃなくて作品の奥になにか物悲しいような寂しさも感じられて惹きつけられます。

わたしは特に陶版が好きで、その作品がストーリーのなかの一部のように感じられて想像力をかきたてます。
一つの作品に広がりを感じる、そんなところが魅力的なんですよね。

いつまでも観ていて飽きない作品の連続でした。


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「都市」1958年

こちらは入り口に展示していた作品。


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小さな微妙に違う色のパーツを組み合わせて、どこを切り取っても表情が違います。
となり同士の色が響き合って場所場所で違った表情をつくっているのがなんとも楽しい!

特にブルーの場所が好き。

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少し前になりますが、大阪の国立国際美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への旅」展に行ってきました。



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気分は「クリムト展」で盛り上がっての「ウィーン・モダン」展。
クリムトの時代背景やクリムトを生み出したウィーンをもっと知りたくなってのタイミングだったので観ていても本当に楽しめました!

それにしても艶やかなウィーン。
なぜあんなにも艶やかなのかがわかった気がする美術展です。

クリムトやシーレと同時期に19世紀末から20世紀初頭にかけて花開いた芸術家たちと建築家や音楽家。彼らの美しい仕事をウィーンの歴史の変遷とともにみていくと、芸術はやっぱりその時代の政治や社会の動きが密接に関わっていて、そこももっと勉強しないとなって思いました。

女帝マリア・テレジアや皇后エリーザベト、ハプスブルグ家の栄光から終焉、そして路面電車や地下鉄が発展し、建築家オットー・ヴァーグナーがウィーンの都市デザインを計画した時代を4章に分けて追いかける今回の美術展。

クリムトが愛した女性を描いた「エミーリエ・フレーゲの肖像」は、結婚はしなかったけど本当に愛していたんだろうなと感じるくらいに凛とした美しいエミーリエ。
観ているこちらがドキドキするほど素敵でした。



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この作品だけ撮影可です。


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シーレ「ひまわり」ははじめに観たときその魅力がわからなかったけど、あとになって思い出すのはこの作品でした。
何か引っかかるものを残す絵です。
ゴッホのように美しく咲き誇る生命力溢れるひまわりではなくて、大地に立ったまま立ち枯れている、いわば死を連想させるひまわり。
 縦に長いカンヴァスは浮世絵の影響といわれていますがおしゃれです!





あと興味深かったのは「ウィーンのフリーメイソンのロッジ」
その集会の絵の中にはモーツアルトが描かれていて、モーツアルトがフリーメイソンのための曲を残しているのもおもしろいですね。
小さな絵ですが結構ツボです。



モーツァルト:フリーメーソンのための音楽
シュライアー(ペーター)
ユニバーサル ミュージック
2016-03-16




艶やかだけじゃないこの時代のウィーン。
近代に近づく時代って日本もですがおもしろい。

好きです。




 

 











 

先日行ってきた西宮市大谷記念美術館2019 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」
ちょうどお昼だったので美術館のそばにあるカフェでランチを。

去年にオープンしたカフェ「ぎんのちゃや」


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今まで大谷記念美術館のそばにはランチする場所がなくて不便だったけど、ホッと一息つけてランチできる場所ができてよかった!

中に入るとテーブル席に案内されたけど、程なく2人組のお客さまが入ってきたので席を譲ってカウンター席に移りました。
お一人さまなので身軽なわたし。
でも、カウンター席でカフェの方といい雰囲気でお話しできてかえってよかったかな。

この日が初めての訪問。
メニューを隅々までチェックしてしまうわたし。


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ランチはローストビーフサンドとアイスコーヒーに。
トーストしたパンが結構な厚さでボリューミー!
けっこうしっかりめな量でした。

お腹が満たされたのでこのあと西宮市大谷記念美術館へ。

これからしっかり楽しむためのエネルギー補給は完了しましたよ!








 

楽しみにしている年に1度の「2019 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」!
先日、西宮市大谷記念美術館へ行ってきました。


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 イタリアのボローニャでは年に1度、子どものための本の見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」が開催されていて、世界各国のイラストレーターが作品を応募しています。


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5点1組のイラストを応募する公募展で、今年は62カ国2901作品の応募。
そして今回の原画展では27カ国76作家全ての入選作を観ることができます。
その中にはなんと日本人が10名も!
なんだかうれしい!


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入り口を入ったところにあるパネルは毎年変わりますが、今年の絵はイケガミヨリユキさんの「石のこえ」。
ふわふわ踊る女の子のキュートな絵に、入り口に入った途端癒されました。

絵を見るときに気になるのは、絵が描かれた技法とそして出身国。
水彩、色鉛筆、刺繍、デジタル・・・。
特にアナログとデジタル技法の両方を使う作家さんは年々増えています。
またお国柄が出ているのも楽しい。
韓国、ロシア、フランス・・・。
年齢も性別もさまざま。

5枚の絵と短いストーリーにはメッセージが凝縮されていて、子供向けとは言え大人の方がその奥に隠されたメッセージを読み取ることができるので楽しめると思います。
伊達に長いこと生きていません。

5枚のストーリーはほのぼのするもの、大人にも刺さるもの。
これだけの数があるのにどれも似ていないのがおもしろい。
個性があってどれも素敵な作品です。

飛び出るほどの作家のエネルギーと感受性が溢れる5枚の作品。
整然と一列に並べてある作品を観るのは、こちら側も心を研ぎ澄ませて見ないと大事なメッセージを見落としてしまいそう。


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かわいいだけじゃない作品こそおもしろい。
そして自分のお気に入りを探すのもおもしろいですよ。


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あべのハルカス美術館に行く前にちょっと心落ち着けるためにカフェに立ち寄りました。
美術館が16階にあって、ちょうどその上の階の「カフェ チャオプレッソ」


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あべのハルカスの17階にあるからけっこう高い!
高い場所がお好きな方にはおすすめです。
でもあいにくわたしは得意じゃないですが。


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この日は結構混んでいて、席はほぼ満席状態。
先に席を確保しておかないとトレーを持ったまま難民状態になりそうです。
窓際しか空いておらずおひとり様のわたしは、とりあえず窓際のお席を確保してカウンターに並びました。
注文して待つマクド(マック)方式です。
ここでは美術展の特別企画メニューがあって、なんとケーキと一緒に頼むとカプチーノにユニコーン の絵が付いてくる!

せっかくなので「ギュスターヴ・モロー展」開催記念カプチーノに!



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うん、よく見ると可愛いかも(ニヤニヤ)


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高いところから大阪の景色を美味しいケーキとともに楽しみました。


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少し前ですが、あべのハルカス美術館の「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」に行ってきました。

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幻想的な内面世界を描くモローの、主に女性に焦点を当てています。

今回はその中でもサロメを観るのが楽しみでした。

「出現」は宙に浮かぶ聖ヨハネの首が衝撃的な作品ですが、実際に絵の前に行くと細かいところも気になって動けなくなってしまいました。


ギュスターヴ・モローが描くファムファタルは美しいだけではない悪女です。
ファムファタルとは男を破滅される悪女のことですが、サロメはそれまで母親にそそのかされた哀れな女のイメージだったのを、モローの描くサロメは目の力が強くて意思が強くて主体的な女を描き出しました。
それがモローの女性観だったのでしょうか。

モローの母親への愛も気になります。
モローが心から愛していた母。
そして恋人。
モローにとっての女性。
モローが描いたファム・ファタル。


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幻想的な絵の中に答えを探そうとする。
そんな楽しい美術展でした。


「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち 」

2019年7月13日(土)~ 9月23日(月・祝)

あべのハルカス美術館


 

神戸にある「Ando Gallery(アンドウ・ギャラリー)」に行ってきました。

兵庫県立美術館を設計したのが建築家の安藤忠雄氏。
そしてその第2展示棟に「Ando Gallery(アンドウ・ギャラリー)」が今年の5月にできました。


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ギャラリーの中には、安藤忠雄氏が手がけた建築作品が展示されていて、建築ファンには特にオススメのスポット。


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初期の住宅作品「住吉の長屋」や「光の教会」、直島のプロジェクト、中之島の「子どもの本の森」、ヴェネチアの「プンタ・デラ・ドガーナ」、パリの「ブルス・ド・コメルス」の模型やプロジェクトの詳細を見ることができます。


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関連の書籍の棚はアートのよう。


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ここから見える「青りんご」は安藤忠雄氏がデザインしたオブジェ。
米国の詩人サムエル・ウルマンの詩「青春」をモチーフにデザインしたものです。


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「青りんご」から見た「Ando Gallery(アンドウ・ギャラリー)」もおもしろい。


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美術館のあちこちに見どころがあって、散策するのも楽しいですよ!
カメラを持った外国人も大勢いて、なんだかうれしい気持ちになりました。
日本の芸術や文化が海外の方々に関心を持っていただけるのはうれしいこと。
そんなスポットがこれからもたくさんできるといいですね。

 

  

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